重要ポジションに返り咲く WPF
- Windows
- ソフトウェア
- 開発
珍しく Build の話。Microsoft が開発者向けに発表した件に触れる。
世間の関心は「Snapdragon X シリーズを載せた PC が M3 MacBook Air より速いらしい」「Windows に搭載される AI 機能がすごい」といった話題に向いているものの、デスクトップアプリケーション開発者の視点からすると無視できないぐらい大きいアナウンスがあった。
当サイトでこれまで何度か触れてきた話だが、Windows 用のネイティブな UI フレームワークは Microsoft の純正だけでもいくつも存在しており、それぞれの立場が曖昧なままいくつも乱立している状況が長く続いていた。ついにそれが「WinUI 3 と WPF を推奨」と公式に明言されたのである。
Microsoft has announced that WinUI 3 is joining WPF as the two recommended native UI platforms for Windows.
リニューアルの始まり?
WPF は AppKit なんかよりずっと後の 2006 年に登場した、比較的モダンな設計で機能も揃っているフレームワーク。WinForms みたいなほかの古いフレームワークと違ってアニメーションが最初から使えるし、HiDPI のような後から推奨された概念にも難なく対応できた。
近年 Microsoft が推している WinUI 3 はタッチパネル対応しやすくよりモダンな手触りなものの機能がまだまだ足りず、ネイティブに少し複雑なデスクトップアプリケーションを作るには WPF が最も現実的な選択肢といえる。
しかしなぜか登場以降はほとんど機能的にアップデートされず、UI の見た目も 90 年代を思わせる灰色ベースのまま放置された状態が 10 年近くも続いていた。その WPF が巨大な二本の柱の片方を担う存在として再定義された意義は大きい。
その立場変更の表れか、Windows 11 時代のモダンなソフトウェアと並べても違和感のないように WPF の UI 全体のテーマ(アピアランス)が一新されたことが同日発表されている。
Additionally, WPF is being updated with Windows 11 theming, which should make it easier for developers building apps with that UI platform to make their app look and feel native and at home on the latest versions of Windows 11. It also now suppers hyphen-based ligatures for Microsoft .NET 9, and the company says it will continune to invest in WPF going forward.
Microsoft Store には WPF Gallery という UI ショーケースのソフトウェアまで登場しており、起動すれば Fluent Design で生まれ変わった伊吹を感じられる。ダークモードにも対応しているようだ。
とはいえ残念ながら見た目がそれっぽくなっただけでタッチパネルでの反応とか当サイトが散々指摘しているぎこちないスクロールパフォーマンスなどはそのままだし、同じ Fluent Design をベースにしているはずの WinUI と整合性のとれない挙動もたくさん見つかるのだが、それでも iPhone 以降普及して最近は当然のようになってるスクロールバーのオーバレイ表示にもようやく対応するなど、一般ユーザでも違いに気づくレベルには注力している様子がうかがえる。
このリニューアルはまだアナウンスされたばかりの β 状態。このまま隅々まで手が回れば、モダンな手触りの部分と 2000 年代から残っているような古い部分が雑に混在している Windows のちぐはぐな体験が数年後にはマシになっているかもしれない。
プラットフォームに沿った手触りを実現したネイティブアプリケーションが好きな人間としては Windows の数年後に少し期待を持てそうだ。
雑談:Snapdragon X
冒頭で興味ないみたいにスキップしたけど Snapdragon X シリーズは気になってる。
今回発表された採用製品は Mac でいう MacBook Air 相当のクラスのラップトップ PC ばかりだけど、これが UMPC みたいな尖ったジャンルで採用されて放熱やバッテリーの制約から解き放たれたらどんな自由な製品が出てくるのか楽しみなのだ。
Apple も同じ方向性の強力なライバル登場で Mac の進化により注力してくれるといいなぁという気持ち。
Share
リンクも共有もお気軽に。記事を書くモチベーションの向上に役立てます。