ひtoりgoと

Surface Laptop Studio って実際どうなの

Mac ハードウェア

仕事用に Windows マシンを入手した。“Surface Laptop Studio”だ。

名前を見てわかるように Microsoft が出してる Windows ラップトップである“Surface Laptop”シリーズに加わった新製品。「Studio」の名前を冠しているだけあって数年先にリリースされている Surface Studio という一体型デスクトップマシンに近い変形ギミックを特長としている。

当サイトの偏った読者層に需要があるとは思えないが、せっかくなので個人的な感想をメモしていこう。これは製品レビューではなく、自分の好み&自分が得したかどうかがすべての評価基準なのであしからず。

変形の意味

最初に触れたように本機の特徴は変形機能。数ある変形ポーズのうち Microsoft がもっとも売りにしているのはディスプレイをキーボードの手前部分に着地させる形態だ。これによってタッチ操作がしやすく、かつスクリーンが見やすい角度にディスプレイが固定される。

変形!

とはいえ Windows 11 になってもタッチ操作が不満なく快適なのは Microsoft 純正 Web ブラウザの“Edge”ぐらいだし、変形にはそれなりに大きく慎重な動きが求められてテキスト入力のたびにディスプレイを持ち上げてラップトップ形態に切り替えるのは面倒に感じられるレベル1なのだけど、大いに使い道があると思う。

ビデオを鑑賞したりゲームするにはディスプレイが近いぶん迫力があって実質的に大画面になるのだ。冗談じゃなく 14 インチのディスプレイが 15 インチ相当に感じられて素晴らしい。そういう用途ではホームポジションに手を置かずたまに手を伸ばして操作するものだけど、そんなときこそポインタ操作ではなくタッチパネルがうってつけだ。見やすく操作しやすい角度に固定できる大画面タブレットとして重宝する。

ディスプレイが近くなる

また、デスクトップ環境でも活きてくる。ラップトップを外付けのディスプレイ、キーボード、マウスを接続して使うときって内蔵ディスプレイの手前部分が視覚的にも物理的にも邪魔だからせっかくのディスプレイを閉じたクラムシェルモードで使いがちだけど、この形態であればタッチもできるサブディスプレイとしてむしろ積極的に設置したくなる。

一つ気になったのは一般のタブレットみたいな音量キーと電源ボタンがディスプレイ周囲にないことだ。ちょっと音量を変えたくてもキーボードが隠れていると困ってしまう。全画面でビデオ再生してたりするとタスクバーから操作するのは億劫だし。これはトラックパッドの 4 本指を音量操作に設定してなんとかやり過ごしている。

あとはさらにディスプレイを寝かせてよりタブレット風に平べったくすることもできるのでペンで絵を描きたい人には魅力的かもしれない2。自分の用途だと使うことはなさそうだけれども。

進化したトラックパッド

Windows では伝統的に Mac でいうトラックパッドをタッチパッドと呼ぶのだが、なぜか Surface ではトラックパッドと呼ぶ方針のようだ。でも設定画面は汎用だからタッチパッド表記になっておりよくわからない。...これはどうでもいいか。

Windows では“Precision Touchpad”という規格を用意していて二本指の慣性スクロールやマルチタッチジェスチャに対応したタッチパッドの操作感を統一している。これに準拠していればみんな同じ手触りかと思いきや、同じく仕事で使っている 2015 年モデルの DELL XPS 13 はひどかった。詳細は以前書いた(→ 2018.2.12):

好き嫌いの感情論や精神論ではなく、具体的に問題がいくつかある。前述の LG Gram 15"(2016)や仕事で使っている DELL XPS 13"(2015)でもこんな症状が:

  • 親指キャンセリングが正しく機能せず、一本指で押しているのにメニューが出てしまうことがある
  • 逆に二本指で押しているのにメニューが出ないことがある
  • タッチパッドに乗った指でそのまま押し込もうとする動きだけでカーソルがずれてしまう

これはメーカーごとの差が意外にあるようで、数年前でも店頭で触ると Surface シリーズは比較的問題がなく出来の良さを感じていた。ドライバの出来が違うのだろうか。

加えて本機ではさらに進化。「感圧センサー + 振動フィードバック」によって、押しても凹まないけどまるで押したかのような操作感を実現できる画期的な仕組みを搭載している。物理ボタンだと構造上、奥にいくほど固くなってしまうけどこれならどこでも軽い力で押せて操作しやすいのだ。自分みたいに「タップでクリック」が嫌いな物理クリック派にはありがたい。...これは実際には 2015 年の MacBook 12” から採用している感圧タッチトラックパッドに相当するものである。

感圧タッチトラックパッド相当

毎度のことながら Mac で採用されたトラックパッドの機能を数年してからそっくりそのまま取り入れる Windows 周辺の姿勢には疑問があるものの3、現物を触ってみるとやはり Surface シリーズである本機のトラックパッドは出来が良くて現在の Windows ラップトップにおいて最高の使い心地に感じられる。

ただし体験が Mac 並になったというにはまだ役不足(誤用)で、

  • 3 本指ジェスチャでタスクビュー(Mission Control もどき)に入るまでのリアルタイムな視覚フィードバックがなく、指の移動量がしきい値を超えると一気に切り替わる
  • 相変わらず行単位のガタガタしたスクロールしかできない App が多い
  • ちょっっっとだけ動かしたいときの指の微量な動きを無視されてしまう
  • CPU 負荷が大きいときにポインター動作がカクカクする

などといった違いや問題があるのだけど、マウスなしで常時使っても問題なさそうな出来には達しているので積極的に使っていきたい。そもそも本機を選んだ大きな理由の一つだ。

全体の意匠は...

特徴的な変形をせずに使うとただのラップトップ PC である。見た目も含めて。実はそれってすごいことで、横から見ても違和感がない厚みでヒンジの凹凸もなしにフリップする機構を追加で内蔵するという、メカ設計の大きなチャレンジを成功させているのだ。

ヒンジを内蔵してるように見えない

そこで Microsoft やるなぁと思うからこそ、同時に悲しさも感じてしまうのがこのマシン。その、何かというと、ラップトップ形態で左右や正面から見たときの意匠や印象が完全に MacBook Pro...。わりと筐体の細部をじろじろ眺めながら 10 年以上も MacBook Pro を触ってきた自分ですら「いまどっちを使ってるんだ!?」って混乱する瞬間がある。

シンプルを目指すとどうしても似てくる...のレベルではない

Microsoft のハードウェアチームって Surface Pro によって 2-in-1 PC の 1 スタイルを定義したし、もともとの Surface Laptop シリーズでもキーボード面にアルカンターラ素材を採用するなどいい意味で個性的なクリエイティビティを発揮してきた実力がある。自分はこの製品が Mac のコピーだとか悪口を言いたいわけではなく、むしろもっと彼らのオリジナリティで業界を発展させてくれるのを期待しているのだが、どうしてそこらのアジアメーカーと同程度のことをしてしまうのだろうか。各社が MacBook もどきばかり作るつまらない世界をなんとかしてほしい4

そっくりな見た目はさておき手触りは MacBook 系の金属感あふれる感じと違って塗装で覆われているようなしっとり感がある。これは嫌な感じも安っぽい感じもしなかった。ただし店頭の展示品において、変形でキーボード手前のディスプレイが設置する部分の塗装が剥げているという報告をいくつか見たので耐久性の面では心配がある。慎重に使わざるをえない。

ラップトップ PC として

このマシンを買った動機として、何も接続せず単体で操作できるそこそこ大きなディスプレイを持ったマシンが欲しかった。前述のトラックパッドの完成度もそうだしキーボードの押し心地も悪くない。ディスプレイは 14 インチで 2400 × 1600 のそれなりに HiDPI で使える解像度、そして MacBook Pro 14” に先駆けて 120 Hz のディスプレイを採用しているから快適に作業できる条件が揃っているのではないだろうか。

ただし 1.8 kg の重量に加え、裏面に隠された厚みもあるので携帯性は低い。今回の用途では部屋から部屋へ移動する程度しか持ち運ばないので、一時期の Mac みたいに無理してスリムにせず、静音性や放熱性を優先したコンセプトは悪くないと思っている。もっとも体が M1 MacBook Pro に慣れてしまった現在では大したこともしてないのに熱を持ってファンの風が出る筐体そのものが時代遅れに感じてしまう気持ちもあるのだけれども。

実は厚い

残念だったのは Mac みたいに US キーボードが選べないこと。Mac よりもごちゃごちゃしたキーが多いから Windows では絶対に US キーを選びたかった5。それでも最近の Surface シリーズは乱立する日本語関係のキーを Mac でいう「かな」「英数」キーに相当するキーに置き換えられていて比較的すっきりしているのが救いだ。

Windows PC にしてはスッキリな JIS 配列

ここまで書いてあれだけど、自分は記号キーの位置みたいな配列そのものにはこだわりがなく、Mac でも JIS/US キーボードを場所によって両刀使いしているぐらいなので最初から特に練習もせず普通に使いやすいキーボードに感じられた。

ソフトウェア面で一つネガティブな話をすると、Windows では macOS と違ってレジストリの隠し設定をいじらないと外付け US キーボードと内蔵 JIS キーボードの異なるレイアウトを同時に使えないみたい。「Windows は macOS よりカスタマイズ性が高い」みたいに言う人がいるけど実際には苦労しないと痒いところに手が届かないことがよくある。

dGPU を積んでいるけど

奮発して上位のモデルを選んだ。CPU が Core i7 になり、iGPU から dGPU(GeForce RTX 3050 Ti)にアップグレードされる。dGPU を積んだマシンを使うのは初代 MacBook Pro Retina 15”(→ 2012.11.3)ぶりだ6

まずグラフィック性能の実力を知るために Steam でゲームをインストールしてみたが、やはり所詮はミドルクラスのモバイル GPU。快適に遊べるフレームレートだと、デスクトップ PC の巨大なグラフィックボードが作り出すリアルで臨場感のある描画品質からはかけ離れたのっぺりしたグラフィックになってしまう。

もちろん 3D ゲームでもイラスト調のグラフィックなものであれば普通に動くし、変形させてディスプレイを手前に引き出したら隣に並んだ二人で協力プレイしても十分に見やすいのでゲーム機の新しいスタイルに感じられた。

Microsoft はこのグラフィック性能をゲームだけでなくクリエイター向けにアピールしていて、ビデオ編集などでは大きな効果を発揮するだろう。Web ブラウザのスクロールみたいな日常のちょっとしたことだって快適になるはずだ。

dGPU を活用したいものの...

しかし、自分はせっかく dGPU 搭載モデルを買ったもののほとんど使わずにいる。dGPU を有効にすると発熱が増えてファンが回るし、なにしろバッテリーの消費が目に見えて速くなるのだ。たとえスマートフォンで動きそうなレベルのゲームを動かしたとしてもバッテリー駆動が現実的でないばかりか、60W 程度の USB-PD 充電器があっても役不足(誤用)ですぐに空になってしまうのを確認した。dGPU を使いたいなら本当に付属品と同レベルな 100W の充電器が必須。4K ビデオ編集とかでも似たようなものだろう。

自分は幸か不幸か普段の仕事でグラフィック性能を酷使することはないので物理的な快適さや気軽さを重視してほぼ無効のままなんとかなっている。iGPU だとせっかくの 120 Hz ディスプレイがややカクカクするのでもったいないのだが...

そういうことを考えると Apple シリコンが MacBook Pro 最上位モデルですら iGPU だけで快適に動くことを目指している理由がわかる気がする。一度あの世界に慣れてしまうとバッテリー駆動で長時間作業できないラップトップ PC に価値を感じなくなってしまう。

故障が心配

近年の Microsoft のハードウェア、基本的なデザインや質感は Apple 製品の隣に並べても恥ずかしくないぐらい良いものの、製造品質やサポートに関しては良くない話を大量に目にする。

幸い初期不良はまぬがれたけど長く使ううえで耐久性がどうなのか非常に不安である。特に今回は変形ギミックの関係上、通常のラップトップよりも機構が複雑なので心配が尽きない。特に自分は初代 MacBook Air のせいでヒンジにトラウマがあるので(→ 2009.2.27)この薄い機構で変形させるたびに壊れそうで怖い7...

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厳しめな感想も多いけど、なにしろ今回 MacBook Pro 上位モデルを変えそうな金額を Windows ラップトップに使ってしまったわけで、どうしても思い入れが強くなる。

仕事用にしては尖ったマシンを選びすぎに見えるかもしれないけど、新鮮な道具を使ってモチベーションを上げるのは大切だし、何よりときどき Windows App 開発に携わる人間としては Microsoft が Windows や Surface シリーズとともにどんな世界を目指しているのか知りたかった気持ちが大きい。その最先端はここにあるはず。


  1. 至近距離にキーボードがあるのにソフトウェアキーボードで操作するシュールな光景が普通に存在する。 ↩︎

  2. そういえば今世代の別売ペンは微細な触覚フィードバックが効くのが特長で、「紙のような質感」と聞いたから期待して店頭で試したのだけど、個人的にはただの振動にしか感じられず期待外れだった。 ↩︎

  3. 例えば 2 本指で 1px 単位の 360° 方向スクロールができるのは 2003 年の PowerBook G4 からで、Windows マシンはそこから 5 年近く経つまで右端の部分を指でなぞって縦スクロールするのが普通だった。 ↩︎

  4. 中にはいい仕事をしている会社もあって、最近では DELL の XPS13 Plus がシンプル路線でありながら Apple とは違う個性を発揮していて素晴らしいと思う。 ↩︎

  5. いつもこれのせいで選択できる Windows ラップトップがひどく限られている。 ↩︎

  6. 普通に 10 年前の記事が登場して当サイトの歴史を感じる。 ↩︎

  7. あれはトラウマになっていて、数年にわたって MacBook のフタを開けるとゼリーみたいにグニャグニャになってしまう悪夢を何度も見た。 ↩︎

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